あんた、百円均一の洗濯ばさみ買うたことある? あれがまた、最初っから当てにならんのよ。
買ったばっかりの時はね、いっちょ前にカチッとしとる。パリッとしたシャツの襟首を、まるで男の指が女の首筋を掴むみたいに、ぎゅーっと、執念深く挟みよる。その時の「ああ、これで安心じゃ」って気持ちが、もういかん。人間ちゅうもんは、すぐに物事を信じたがる弱い生き物じゃから。
ところがどうじゃ。洗濯ばさみっちゅーもんは、人生そのものじゃな。雨風に晒され、キンキンの日光に灼かれて、プラスチックの白い肌が、みみっちく、みみっちく劣化していく。まるで、世間の男に揉まれて、艶を失う女郎の肌みたいに、カサカサになって脆うなっていくんよ。
そうして、とうとう、肝心な時に力が抜ける。パチン!と留めていたはずのバスタオルが、吸い込まれるように深く下の階に落ちていく。
この「緩み」がね、また業が深いんよ。貞操と同じで、一度緩んだもんは、もう元には戻らん。その緩みきった口が、何かを語りかけてくるみたいで、私はぞっとするんじゃ。
「あんたも、いつかこうなるんじゃで」って。
ああ、やっちもねえ、実にぼっけえ、きょうてえ話じゃと思わんかね? 
ほんま、生きた人間が一番怖いんじゃわ。

岩井志麻子風www
ちなみに私も先生同様黒鮑です☆